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大阪地方裁判所 平成6年(ワ)4813号 判決 1997年5月29日

原告

萬木眞也

被告

森川直政

主文

一  被告は、原告に対し、五五三万四五二六円及びこれに対する平成四年一二月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、九三七万二〇六四円及びうち五七五万四三三八円に対する平成四年一二月二九日から、うち三六一万七七二六円に対する平成七年七月六日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、自動二輪車を運転していた原告が、その前方を走行していて進路変更をした被告の運転する自動車と衝突して負傷したとして、被告に対し、不法行為に基づき損害の賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実等

以下のうち、1は当事者間に争いがない。2は甲第一、第二号証及び弁論の全趣旨により、3は甲第一号証、第三ないし第六号証、第一八ないし第二〇号証、検甲第一、第二号証及び原告本人尋問の結果により認めることができる。

1  被告は、平成四年一二月二九日午後一〇時三〇分ころ、普通乗用自動車(奈良五八み六六八、以下「被告車両」という。)を運転して大阪市北区天神橋五丁目七番六号先道路(以下「本件道路」という。)を進行して左に進路変更するにあたり、後方から進行してきた原告の運転する自動二輪車(一京そ三三三、以下「原告車両」という。)に被告車両を衝突させた(以下「本件事故」という。)。

2  本件事故は、被告が、本件道路(片側三車線あり、以下、道路端側から中央線側へ順次「第一車線」「第二車線」などという。)の第三車線を南から北へ向かい時速約四〇キロメートルで進行中、第二車線へ進路変更するにあたり、第二車線を進行してくる原告車両を後方約一四・五メートルの地点に認めたのであるから、原告車両との安全を確認したうえ進路変更すべきであつたのに、被告車両が先に進路変更を完了できるものと軽信し、原告車両との安全を確認することなく漫然と前記速度のまま左に進路変更した過失により、原告車両に被告車両左側後部を衝突させて、原告車両を左斜め前方に暴走させ、原告車両をその左前方で駐車中の木村浩司所有の普通乗用自動車(神戸四六さ六九〇)に衝突させたというものである。

3  原告は、本件事故により、左肩甲骨粉砕骨折、左第二、三腰椎横突起骨折、左肩拘縮の傷害を受け、平成四年一二月二九日から平成五年一月一二日まで特定医療法人協和会総合加納病院に入院し、同日から同年七月一九日まで関目病院に入院し、更に同病院退院後、同病院に通院し、平成七年七月六日同病院で症状固定の診断を受け(当時原告は三〇歳)、自動車保険料率算定会調査事務所により自動車損害賠償保障法施行令二条別表障害別等級表一二級五号、一四級一〇号に該当するとの認定を受けた。

二  争点

1  原告の損害

2  過失相殺

第三当裁判所の判断

一  争点1(原告の損害)について

1  治療費 一万〇一五五円(原告主張一万〇〇三〇円)

甲第一三号証の一ないし五によれば、原告は、前記治療のため特定医療法人協和会総合加納病院に二〇六〇円、関目病院に一四二〇円を支払つたほか、平成五年一月六日には大阪大学医学部附属病院を受診して二三八〇円を支払い、また、同月一一日には大阪厚生年金病院を受診して四二九五円を支払つたことが認められ、以上の合計は一万〇一五五円となる。

2  入院雑費 二万五七〇〇円(原告主張どおり)

甲第一五号証の一ないし八及び弁論の全趣旨によれば、原告は、前記入院期間中に二万五七〇〇円を下らない雑費を負担したものと認められる。

3  付添看護費 五万七八〇〇円(原告主張どおり)

甲第一四号証の一ないし三によれば、原告は、関目病院入院中に職業付添人の付添を依頼し、そのための費用として五万七八〇〇円を負担したことが認められる。

4  文書料 九二〇〇円(原告主張一〇万九二〇〇円)

甲第一六号証の一ないし三、第一七号証の一、二によれば、原告は、診断書代として八〇〇〇円、事故証明書代として一二〇〇円を支出したことが認められる。なお、原告は、右のほか診療報酬明細代として一〇万円を負担したと主張するが、これを認めるに足りる証拠は見当たらない。

5  休業損害 三四七万〇〇三四円(原告主張三四七万二九三〇円)

甲第一一号証の一ないし三及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故当時大阪全日空エンタープライズ株式会社に勤務して製菓の調理の業務に従事し、本件事故前の平成四年一一月には二一万七三三三円、同年一二月には二三万三〇六五円、平成五年一月には二五万〇九二七円の給与の支払を受けていたこと、原告は本件事故により平成五年六月末まで休業を余儀なくされ、同年七月には少しずつ職場に出るようになり、同年八月に職場に復帰したことが認められるところ、前記傷害の内容、程度及び治療経過に照らせば、原告は、本件事故により、本件事故の日の翌日である平成四年一二月三〇日から平成五年六月三〇日までは労働能力の一〇〇パーセントを、同年七月一日から同月三一日までは労働能力の七〇パーセントを、同年八月一日から平成六年七月三一日までは労働能力の五〇パーセントを、同年八月一日から症状の固定した平成七年七月六日までは労働能力の二〇パーセントをそれぞれ喪失したものと認めるのが相当であるから、本件事故による原告の休業損害は三四七万〇〇三四円となる(円未満切捨て、以下同じ。)。

計算式 (217,333+233,065+250,927)÷92×(183+0.7×31+0.5×365+0.2×340)=3,470,034

6  逸失利益 三八九万三五二二円(原告主張三六一万七七二六円)

原告は、本件事故による後遺障害のため労働能力の一四パーセントを少なくとも七年間にわたり喪失したものと認められるところ、原告は、本件事故に遭わなければ、症状固定時には少なくとも賃金センサス平成六年第一巻第一表・産業計・企業規模計・学歴計・三〇ないし三四歳の男子労働者の平均賃金である五一三万四〇〇〇円を得ることができたと認められるから、右収入を基礎に右期間に相当する年五分の割合による中間利息を新ホフマン方式により控除すると、本件事故時における原告の逸失利益の現価は三八九万三五二二円となる。

計算式 5,134,000×0.14×(7.278-1.861)=3,893,522

7  慰藉料 四五〇万円(原告主張五九一万九四七三円(入通院分三六七万九四七三円、後遺障害分二二四万円))

本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、原告が本件事故によつて受けた精神的苦痛を慰藉するためには、四五〇万円の慰藉料をもつてするのが相当である。

二  争点2(過失相殺)について

甲第一号証及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、本件道路の制限速度は時速五〇キロメートルと指定されていること、原告は、本件事故現場の手前の信号機により交通整理の行われている交差点で信号待ちのため被告車両と並び、被告車両にやや遅れて発進した後時速約五〇キロメートルで走行していたが、その後加速を始め、本件事故当時には時速約六〇キロメートル程度には達していたこと、被告車両まで約五メートル程度まで接近したとき、被告車両が進路変更を開始したため、危険を感じ左に避けながらブレーキをかけたが、間に合わず原告車両の右ハンドル先端が被告車両の左側面後方に接触したことが認められる。右によれば、原告も本件事故当時は制限速度を時速一〇キロメートル程度は超過して走行していたうえ、被告車両の動静に十分注意することなく被告車両に接近して行つた点において過失が認められ、既に認定した被告の過失の内容及び程度に照らすと、本件事故の発生には原告にも三割の過失があるというべきである。

三  結論

以上によれば、原告の損害は一一九六万六四一一円となるところ、過失相殺として三割を控除すると八三七万六四八七円となり、甲第一二号証の一、第一九、第二〇号証によれば、原告は、労働者災害補償保険から休業補償給付として一一〇万一九六一円の支払を、また、自動車損害賠償責任保険から二二四万円の支払をそれぞれ受けたことが認められるから、右金額よりこれを控除すると、残額は五〇三万四五二六円となる。

本件の性格及び認容額に照らすと、弁護士費用は五〇万円とするのが相当であるから、結局、原告は、被告に対し、五五三万四五二六円及びこれに対する本件事故の日である平成四年一二月二九日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 濱口浩)

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